これからの働き方【第2回】 - 終身雇用の終焉
「これからの働き方」第2回になります。
まずは労働環境の変化として「終身雇用の崩壊」について見ていきます。
終身雇用の終焉~終身雇用なんてもう守れない~
先日、経団連の中西会長から「正直言って経済界は終身雇用なんてもう守れないと思っているんです」との発言があり、ニュースで話題となりました。
日テレNEWS24 – 経団連会長”終身雇用を続けるのは難しい”
終身雇用とは「同一企業で業績悪化による企業倒産が発生しないかぎり定年まで雇用され続けるという、日本の正社員雇用においての慣行」(Wikipedia)という意味ですが、高度経済成長期から続けてきたこのような「保証制度」が維持できなくなってきた、との内容でした。
日本は長く終身一社勤務が主流の働き方であり、転職組は少数派でした。
一度会社を出ると収入は下がり、また社会的にも印象が悪くなるといった負のイメージを持たれやすい風潮がありました。
その背景にあったのは「ずっと同じ会社にいれば雇用も安定しているのに、どうしてリスクをとるのか」です。
終身雇用は日本人の好む「保守」「安定」であり、ありがたい制度として存在していました。
ではなぜ、終身雇用の維持ができなくなってきたのか。
原因を把握した上で、私たちはどのように対策をすればよいか考えていきます。
- 終身雇用は経済成長期から踏襲されてきた慣行
- 終身雇用の維持は限界を迎えている
原因の考察
もともと終身雇用は法律や条例によるものではないため、あくまで企業側が自主的に行ってきた「慣習」です。その慣習を廃止するということは、企業側にメリットがなくなったと考えるのが自然かと思います。
企業側のメリットを知るために、終身雇用のはじまりを見てみましょう。
終身雇用の目的
1950年代以降の高度経済成長期と呼ばれる時期においては、日本は年平均で10%もの経済成長を達成してきました。
この背景にあるのは継続的な労働人口増・戦後の特需などです。
終身雇用の慣習が定着したのはこの時期、各企業では業績拡大に向けて熟練工を囲い込むために雇用を保証したことから習慣化したそうです。
言い換えると、「企業成長の必須リソースである、優秀な労働者へのインセンティブ」として終身雇用を位置付けていたのです。
さて、では現代において、囲い込む必要のあるレベルの労働者がどれほどいるのか、という話になります。
結論としては「囲い込む必要がないから終身雇用を廃止したい」というのが経団連の回答でした。なぜでしょうか。
私の考察は2点です。
- ビジネスモデルの成熟化
- ビジネススピードの高速化
ビジネスモデルの成熟化
終身雇用の導入期・経済成長期と比較して、現代は一定の「ビジネスのマニュアル化」が完了しています。
経験・スキルのない労働者でも、数カ月で戦力化する研修や仕組みが整っており、また即戦力となるポジションが常に用意されています。
例としては小売り・営業会社・飲食店などです。
新入社員やアルバイトでもスキルがないなりに最低限の役目をこなせる販売員・営業員・店員などのポジションは人手不足になりがちですが、それに対しマネジメントは数名で十分です。
コンビニやチェーンの牛丼屋・ファストフード店をイメージすればわかるかと思います。すでに会社のブランドとマニュアル・仕組みが完成しているため、「能力者」は数名でよいのです。
その数名のために全正社員の終身雇用を守る必要は、今の企業にはない、ということと考えられます。
ピンポイントで説明しましたが、すべての企業で「駒」となる層と「指揮官」となる層は存在します。
企業は「駒」を終身雇用する必要はありません。むしろ適度に新陳代謝してコストを低水準で維持させたいでしょう。
では「指揮官」へのインセンティブ効果は捨ててよいか、という点は議論が必要かと思いますが、私の考えでは、「優秀な指揮官は終身雇用がなくとも、企業から必要とされ厚遇される」が答えです。
制度的な終身雇用がなくても、企業から必要とされる限りは雇用関係を維持できるため、「指揮官」には終身雇用のインセンティブ効果が弱いと考えます。
よって、全正社員対象の社会主義的な終身雇用という発想は廃止し、企業の負荷を減らしたいという方針を打ち出したのではないかと思っています。
- 終身雇用は「優秀な労働者へのインセンティブ」であった
- マニュアル化の進んでいる現代で、企業が雇用を保証するメリットはない
おわりに
ではこの原因に対して、私たちはどのように向き合い、行動していけばよいか、次回考えていきましょう。
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【参考資料】
Wikipedia – 終身雇用(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%82%E8%BA%AB%E9%9B%87%E7%94%A8)