仕事を増やすダメ上司にならないプロジェクトスコープ管理とは
社会人歴が長くなり、お客さん・納品物に責任を持つ立場になってくると「どこまでやっておけばOKか」という判断を迫られることが出てきます。
当初予定していた作業に追加して「これもお願い」と言われたときに、簡単に受け入れてしまうと作業の負荷が上がってしまい、品質が下がったりメンバーの士気が下がるのどの悪影響が出てしまいます。
その際ポイントになるのは作業スコープのマネジメント。今回はスコープマネジメントの考え方についてご紹介します。
【この記事を読むメリット 】
-
プロジェクト管理が身につく
- 余計な仕事を増やさずに済むようになる
がむしゃらに頑張る時代は終わる。注文されていないメニューは提供する必要はない。
それでは今回のコンテンツです。
プロジェクトスコープという考え方
「スコープ」とは、主にシステム開発で用いられる言葉であり、
作業範囲を決めたもの
を指します。
例えば、A社のコンサルティングを受注した時には下記のようなスコープ設定となります。
- 社内資料を用いたA社経営指標の机上分析
- 市場でのA社の位置づけの調査・分析
- 競合他社の調査
- 社員・取引先へのヒアリング
- 上記調査結果のとりまとめ・報告
原則、契約や金銭の授受の前にスコープの設定が行われ、関係者の同意のうえ契約書に作業内容として記載されるべきものです。
スコープは最後まで管理されるべき
前章のとおり、スコープは案件が始まる前に決まっており、本来は最後まで変わらないものです。
仕事の内容がポンポン増えてしまっては、コストが契約金額をオーバーしてしまいますし、予定していたスケジュール・メンバーで対応しきれなくなってしまいます。
例外的に余裕を持って予算やスケジュール計画を立てていた場合には、「変更管理」というプロセスを経てスコープを広げることもありますが、こちらに非がない場合はあまりすべきものではないでしょう。
安請け合いせずに、きっちりとスコープを管理することがマネージャには求められています。
日本のビジネスシーンでは「和」を重んじて受けてしまうことも多いですが、プロジェクト管理として良いことではありません。
仕事を増やすダメ上司の頭の中
日本ではまだまだ、チームの採算をマネージャが管理する「プロジェクト制」の感覚が薄いと言えます。
また、失敗をしないことで昇進する年功序列的な考えも少なからず残っています。
そのため「追加作業を断られることでお客さんが怒り、クレームになったら大事だ」という「怒られたくない」願望が真っ先に立ち、仕事を増やしてしまうのです。
また多くの職場で、部下の作業状況を把握できるほど優秀なマネージャがいないことも問題です。
まとめると、
- お客さんを怒らせると後が怖いため
- チームの作業状況はよくわからないが
⇒ Yesと答えておいて何とかしよう
というレベルが実態でしょう。
スコープ管理のポイントはたった3つだけ
前章を踏まえて、管理の際に気を付けるべきポイントは3つあります。
- 正しい対応を考える
- チームの作業状況を把握する
- その場で一次回答を出す
1.正しい対応を考える
先ほど例として挙がった
- 社内で問題になるとと評価が下がる
- お客さんともめると次の契約がもらえない など
という悩みは少し見直してみる必要があります。
前者であれば、社内の上司がプロジェクト(スコープ)マネジメント意識がある人である場合には、むしろ正しい判断として解釈される可能性があります。
ビジネスはお客さんに対するボランティアではないので、意見することに問題はありません。
追加になった作業をすべて自分がサービス残業で処理するなら会社は傷みませんが、そこまでして頑張ることで、得られるものはあるのでしょうか。ご家族や友人は心配しているかもしれません。
会社のビジネスについて、自分が必要以上に責任を負うことはない!
2.チームの作業状況を把握する
頻繁に行うものではありませんが、自分たちの当初の計画に不備があったり、お客さんの要望にも説得性がある場合、追加の作業を受けることがあります。
その際にも、自分のチームで引き受けることができるのか、いつでも判断できるようにしておくことが望ましいです。
チームの余力次第では追加分を対応することも可能であるため、理由をきちんと説明できるようにしておきましょう。
【悪い例】
「お客さんの言うことだから断れない」
【よい例】
「作業Aに1人、作業Bを2人で進めており、10日までは手が離せないため、追加は難しい状況です」
断るための理由がスラスラ出てこないことも、追加作業をねじ込まれてしまう原因に。
3.その場で一次回答を出す
多くの場合、お客さんから追加作業を頼まれると「一度持ち帰って確認します」としてしまいますが、これは好ましくありません。
この場合、依頼をしたお客さんは「持ち帰って検討してくれている」という印象を持ってしまうため、時間が経つにつれ断りにくくなっていきます。増して問題を起こさないことに重きを置く日本企業において、断ることに抵抗があるのは仕方のないことです。
問題は断りにくく、かつ上司に社内で怒られるのも嫌なので、上司に判断を仰ごうという「逃げ」の姿勢です。
明らかに作業の追加になるのであれば断ることに問題はありません。そのための契約です。当初のスコープではなかったことを説明することで、諦めてもらえる、もしくは恩を売ることができるでしょう。
プロジェクトスコープ管理の徹底を
お客さんや親しい間柄の人物からの依頼はことわりづらいものです。
依頼を受けてしまって、自分が損して対応をした方が楽と考えたくなることもあるでしょう。
しかしチームのメンバーやご家族は「なぜそこまでして」と思っているかもしれません。
断る勇気を持つことで、安定感のあるプロジェクト・スコープ管理を始めてみてはいかがでしょうか。